夜は短し恋せよ乙女

私は今、本を読んで泣いている。
物語に感動して泣いているのではない。こういう本が生まれたこと、そしてその本に出会えたことに感謝し、感極まって泣いているのである。
本の神様ありがとう。なむなむ!夜は短し歩けよ乙女


 森見登美彦、通称モリミーの最新作
 『夜は短し歩けよ乙女』(角川書店


今まで読んだエンターテインメント小説の中でダントツのナンバーワン。
おそらくこの先、四半世紀ほどはこれを超えるエンタメ作品には出会えまい。


例によって京都を舞台にした妄想青春小説だが、今回は妄想大学生の「先輩」と、その彼が惚れて追いかける「黒髪の乙女」、このふたりの語りが交互に入れ替わる。

先斗町をひたすら飲み歩いていく中で不思議な人々に出会う第一話で、「おほほ、これはすごい傑作であろうぞ」と予感したのだが、古本屋市を舞台に幻の書物を巡って地獄の激戦を繰り広げる第二話は抱腹絶倒、さらに、学園祭に出没するゲリラ演劇とパンツ総番長(願いが成就するまではパンツを穿き替えないという誓いを立てている)の恋の行方を追ったドタバタの第三話で巻き起こるご都合主義的大騒動には思わずほろりときて、もうこれで予は大満足であるぞ、と思っていたら、第四話はもっとすごかった。もはや自分が笑っているのか泣いているのかよくわからない状態になり、口から何かがほわほわと出ていってしまった。


ああ俺はほんとに説明が下手だ。こういうときはくやしい。
とにかく、すべてのページに愛がこもっているのです。

松亭諸君、とりあえず読まれよ。俺の本棚から勝手にもってっていい。
そのほかのみなさまも、忙しい人はとりあえず買っておこう。そして正月など暇なときにふと思い出したら手にして読んでみてください。「おともだちパンチ」の愛を、きっと感じるはず。



P.S.
学生天狗樋口氏(モリミーファンにはお馴染みのキャラクターのはず)による、「樋口式飛行術」の教えがすばらしいので書き付けておく。


 「地に足をつけずに生きることだ。それなら飛べる」